古くて新しい話題、それはたで酢と鮎の話。
たで酢(タデ酢)になじみのない方に、ざくっ!と説明させて頂きますが、これがなんと川魚に限らず海の魚とも相性が良いのです。
それでは肉には不向きなのか、と思われる方がいると思いますが、どうしてどうして、意外?なことに肉料理もまた相性がよいのです。
相性の元となるものはナンだろうかと考えてみましたら、「生臭さ」という匂いにあるのではないかと考えております。
たで酢は、一方で生臭い匂いを消してくれる効果が期待できるのです。
こんなところから、小生はたで酢に少量の醤油を垂らししたものを納豆など匂いの強い食品を食べるときに和えて食べて頂くことをおすすめしています。
それでは、いったい日本人はいつから鮎をたで酢で食べ始めたのでしょう。
万葉集には鮎を詠んだものが数種見られ、古の人々は、海の魚よりも鮎や鯉、スズキなど川の魚をこよなく愛していたことが伺われます。
大変興味があるところですが、鮎とタデ酢の関係についての明確な文献に出会っていないので、確信を持ってコメントすることができません。
一昨年6月に「日本の伝統調味料 たで酢」のテレビ取材があり、室町時代の料理書四条流包丁書(1489) に「魚料理にはタデ酢(タデズと濁るそうです。)が合う」と紹介されていることを映像で確認させて頂きました。
そもそも、選ぶのに一苦労するほどあふれている現代版調味料と違い、塩、酢、酒、醤など、限られたものだけで味を作っていた時代のことですので、当時のたで酢は大変貴重な調味料ではなかったかと推測することができます。
「清流の女王」といわれる鮎の遡上に合わせて、その水辺でこぼれ種から芽を出し成長していく「タデ」との関係は、どこか不思議なロマンを感じさせ、他方でいろいろな呼び名を持っているところも似ています。
氷魚、子鮎、若鮎、香魚、年魚、落ち鮎等々、季節や成長の移ろいに合わせてその呼び名を持ち、魚体はどこまでも美しく、そこから発する香りはメロンともスイカとも例えられております。
タデ(食べられるタデ)は、そのアユの遡上する川辺に育ち、マタデ、ホンタデ、ヤナギタデなどと呼ばれ、市場においては鮎タデ、笹タデ(いずれも栽培されているタデ)とも呼ばれております。
刺身のつまに出されるのは発芽後すぐの芽タデで、赤い色をした紅タデと緑色のアオタデを見たことがあると思います。
現代における「たで酢」の利用法は「鮎」のみ、のところからさほど進展をみておりません。
小生はこのことを真剣に考え、どうにかして「たで酢」をもっと利用して頂き、いいろいろなおいしい食べ方があることを多くの人に知ってもらいたいと願っております。
小生は最も伝統的なスタイルの「タデ酢みそ」が大好きです。
大阪では夏の定番として提供される「豚の冷しゃぶ」に特に合い、かけてもつけてもよしの優れものです。
タコのぶつ切りは、これもキュウリの薄切りを合わせて夏料理の一品となりますが、これにも実によく合います。
そうそう、できればみそは「白みそ」でお願いします。
他にも、タデ酢に醤油を少し垂らして野菜ドレッシングなどにもグーです。
梅雨が終われば夏本番!
古くて新しい食べ物「タデ酢みそ」で今年の夏を乗り切ることを是非!おすすめ致します。