悲しみの中に久那土の同級生A君の葬送に参列して参りました。
参列した同級生全員が霊前に並び、代表して同級生Y君は弔辞を述べようとしていましたがなかなか始まる様子もなく、しばらく沈黙の時間が続きました。
同級生代表Y君は流れる涙でメガネが曇り、手にした弔辞の文字を読むことができなかったのです。
霊前に並んだ同級生らは深い悲しみの中にも千金の値のする沈黙の時間を共有しており、その沈黙は参列された方々の涙をいやまして誘うこととなりました。
戦後まもなく生まれの同級生達は、日本全体が経済的に恵まれない中で必死になって日本の復興の一翼を担うべくひた走りに走り続け、ほんの4年ほど前にその大きな役割を終え第一線を退くべく定年退職をしたばかりでした。
同級生A君は故郷山梨に家を建て畑を購入し、家族との時間を少しでも取り戻そうと必死になって残りの人生を組み立て直そうとしておりました。
この世の中でやむなく不公平に甘んじなくてはならないことがあるとしても、同級生A君に当てはまることは皆無に等しいものと確信を持って言い切ることができます。
A君の豪放磊落でありながら、常に他の人のことを優先して考え行動する細やかな気配りは人の生き方の模範であり、誰もが賞賛する清廉潔白な生き方は同級生の鑑たるものでもありました。
そんなA君にせめてあと10年くらい生きることのおまけをやっても誰も文句は言わないことなのに、神様はなんと不公平なことをしてくれるものと大きな声で文句を言いたいのです。
程なくA君が愛してやまなかった故郷山梨はピンク色の桃の花に埋もれ桃源郷と化します。
山梨の春はもうすぐそこまできています。
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