…コオロギの 初音に夏の 終わりかな…
暑かった…
今年の夏もようやく終盤にさしかかってきており、朝夕の風も心なしか涼しく感じられるようになって参りました。
うだるような、との表現がそのまま当てはまる日々が続いた今年の夏でしたが、ようやく一息入れるところにきております。
初夏から始まった「鮎とたで酢」のシーズンも一息入り、秋からの定番である「鍋物とポン酢」とのバトンタッチの機会を伺っているところです。 
季節を感じさせる食べ物の脇役でもある調味料は、時には主役を引き立たせる役割を担っていることにより、季節の移ろいに愛着を覚えることとなるのはごく自然の成り行きだと思っております。
このように考えてみますと、季節の移ろいと食とには切り離せない密接な関係にあることかがおわかりになると思います。
人々は季節と食とを上手に融和させながら、いろいろと工夫を重ねて悠久の時を刻んできたのですね。
さて、昨日のこと、まだうだるような暑いさなかに「かに酢を購入できるところを教えてもらいたい。」との問い合わせがありました。
「美味しいかに酢を探していたが、仕出しに入っていたかに酢を食べて問い合わせた。」とのことでした。
ここのところは大変誤解されやすいところですので最初に断っておかなければなりませんが、小生の経験上から申しますと「美味しいかに酢」というものではせっかくのカニを美味しく食べることはできないと思います。
本当に誤解しないでもらいたいのですが、「美味しいかに酢」ではなくて、「カニを美味しく食べさせてくれるかに酢」であるかどうかが重要なのです。
本来もっているカニの甘みと旨味をいかに引き出してくれるかが「かに酢」の役割にほかならないからです。
ですから小生のところのかに酢を「美味しいかに酢」と説明したことはありません。
「カニを美味しく食べさせてくれるのがこのかに酢です。」と説明しています。
小生の言い回しについて説明不足のところが多々あると思いますが、ここのところは個々の味覚の問題としてご勘弁願いたいと思います。
カニは生きているものを焼いて食べるか、塩ゆでにしてその場で何も付けないで食べるのがベストであることはどなたでも知っていることです。
しかしながらここで問題なのは、生きているカニがいつでもどこでも簡単に入手できないことにあります。
流通の問題もあったりして「冷凍カニ」が手軽に入手できるカニの主流を占める所以となるわけです。
そこで「かに酢」の真骨頂が問われることとなります。
小生が最も強調したいことは、冷凍カニに生きているカニと同じ味を求めることは無理があるということで、むしろ全く別の美味しい食味を作り上げてくれるのが「かに酢」の役割である、ということです。
美味しさは個々の味覚の話ですので、異を差し挟むつもりはありませんが、誰が食べても美味しい生きているカニと冷凍カニを比較することにはかなり無理があると思いますし、ましてや、昨年捕獲されたものなのか、一昨年なのか、それとも…
表示記載がされたものを見たことがありませんですよね。
かに酢が介在することにより、冷凍カニがむしろ生きているカニとは別の美味しい食味を提供してくれるのであったら「美味しいかに酢」と表現しても違和感がありません。
問い合わせをされた方が最も言いたかったことはここのところだと思います。
そういう存在感のある「かに酢」であることを目指しております。