肌寒く感じる日が急ぎ足で追いかけてきております。
日本人は一年の四季を通じて豊かな感受性を養ってきたはずでしたが、このところ季節に定期性が見られず移ろいに急激な乱れが生じてきています。
四季の持つ定期性は、律儀な日本人にとって生活の基盤を為すものであり、日常生活の目安でもあったと思います。
そんな中で、ぽん酢と相性のよい鍋物とがもたらす良質な食生活が気になる季節が到来しました。
なんといっても、鍋物に入れる具材に特段の決まりがないのが鍋物の魅力の一つで、実際に前日の料理の残り物を入れても立派に鍋物料理としての存在を発揮してくれますので、家計の強力な助っ人にもなってくれます。
この鍋物料理の引き立て役がぽん酢です。
前日に、ぽん酢で頂いた鍋物の残り物で、今度はぽん酢をたっぷりと鍋物の中に投入し、うどんやご飯を入れるとダシが利いたぽん酢のうどんすきやポン酢おじやを頂くことができます。
味が引き立つのはこちらの方で、イメージとしては郷里のほうとううどんに似てなくはないのですが、とても酸味が引き立ち、一般的には苦手な方が多いと思われる酸味がおいしく感じるこの食べ方が大好きです。
最近、「ぽん酢屋」という言葉に慣れてきたせいでしょうか、この言葉にかなり親しみを感じるようになってきています。
そのぽん酢屋が、創業が昭和32年のぽん酢専門店という自負もあり、他社に負けない安価でおいしいポン酢を作ることに目覚めてきています。
数日前のことですが、料亭仕様の高級ぽん酢の製造依頼を頂きました。
話をお伺いすると自前で材料を揃え、確かなものを作っていることが確認できます。
しかながら、費用対効果を考えると理想と現実の落差がありすぎ、現状に合っていないこともわかりました。
さらに、仕込んだ後の寝かせる期間が長いこともさることながら、使用する原料が通常では通年を通して入手困難なものが含まれていることもわかりました。
どうしたものかと思案しておりましたが、せっかくのご依頼でもありますのでお受けすることと致しました。
至難なことを可能にすることも、ぽん酢専門店の真骨頂であることを後継者達に見せてもやらなければなりません。
先を歩んで行く者の使命としては、どのような困難が待ち受けようともその困難に果敢に立ち向かい、そのことを背にして常に先頭を進んででいかなければならないと考えています。
「困難を背にして教える」ことも活きた教育の一方法でもあるのかなと、鍋の季節到来を機に、いろいろな思いをめぐらせているところです。